ヘルスケア情報


HOME >> ヘルスケア >> 疾患解説コーナー >> 股関節の病気
病名は聞いたことがあるけれど、それがどのような病気なのか詳しくは分からない...
そんな病気や治療方法などを解説しています。

股関節の病気 2008年9月掲載

股関節は大腿骨頭が寛骨臼(臼蓋)と呼ばれる骨盤の骨の凹みに適合し、関節軟骨が円滑な運動を可能とし、関節包、靭帯が補強している。臼蓋の造りが浅い臼蓋形成不全や先天性股関節脱臼などが原因で、骨頭の適合性が障害されれば二次性の変形性股関節症に進行する。大腿骨頭の栄養する血管は免疫抑制薬であるステロイド薬やアルコール多飲で阻血され、骨頭の壊死が生じる可能性がある。

変形性股関節症

股関節の代表的疾患として変形性股関節症が挙げられます。股関節の軟骨に摩耗(すり減り)変性が起こり、軟骨がうまく滑らないため、歩行時に痛みが生じる病気です。特に原因の見当たらない一次性のものと、臼蓋(きゅうがい)形成不全や先天性股関節脱臼、大腿骨頭壊死などが原因で起こる二次性のものとに分けられますが、日本ではほとんどのものが臼蓋形成不全による二次性股関節症です。

症状は初期には長時間の立位や歩行後の痛みやだるさですが、関節のすり減りがひどくなると歩行時に加えて安静時にも痛みを感じるようになります。症状が進行し、骨頭が臼蓋から脱臼するに従って、脚が短くなり、股関節の筋力低下による跛行が出現します。

レントゲンでは臼蓋形成不全の程度を判定し、軟骨の変性が進行すると、関節の隙き間が狭小化して、骨棘(骨の棘)、骨嚢腫(骨の中に空洞ができる)や骨硬化像がみられる。

(図1:変形性股関節症)

保存的治療

痛みの少ない初期には、痛み止めの服用や筋力トレーニング(外転筋力トレーニング)、杖の使用が有効です。症状が進んだ痛みの強い患者さんや、痛みが少なくても将来的に関節症性変化の進行が予想される患者さんには手術を勧めます。

手術的治療

骨きり術

股関節の代表的手術として、骨きり術と人工股関節置換術があります。骨きり術は50歳以前の活動性の高い患者さんで、骨切りにより関節の適合性を高め、荷重部の関節軟骨の再生を期待する手術で、骨盤側の骨を切って股関節の適合性を改善する骨盤骨切り術や、大腿骨頚部の角度を調節する大腿骨内反・外反骨切り術、大腿骨頭壊死症に対して行う大腿骨頭回転骨切り術などが挙げられます。

人工股関節置換術(THA)

50歳以降の軟骨変性が進行した患者さんには人工股関節置換術(THA)が選択されます。THAでは、関節軟骨がすり減った股関節に対して、骨盤側(臼蓋)と大腿骨骨頭側を人工関節に置換し、関節面には耐磨耗ポリエチレンを用います。人工関節同士が擦れ合いますので痛みはほぼ完全に消失します。

(図2:THA) 

低侵襲性人工股関節置換術(MIS-THA)

従来の人工股関節置換術では大きな皮膚切開(場合によっては20から30センチ)が必要で、筋肉の切離も大きいため術後の筋力低下やリハビリに時間がかかるなどの問題がありました。人工股関節置換術においても、手術手技や手術器械の改良により、術後疼痛の軽減、より良好な機能回復、早期リハビリテーションの為に最小侵襲手術(MIS: Minimum Invasive Surgery)が行われます。

しかし、いくら皮膚の切開を小さくしても、内部の筋肉は従来法と同様に切離する方法では良好な機能改善が得られるのかとの疑問があります。これに対し、股関節前方進入法(DAA: Direct Anterior Approach)では、手術手技や手術器械の改良により非常に小さな皮膚切開で、さらに筋肉を切離せず、筋間を分けて股関節に到達し、人工股関節を挿入する事が可能となりました。当院でも、可能な患者様にはこのMIS-THAを行っております。従来の方法の多くは、股関節の側方や後方に切開が行われますが、DAAでは、約8cmの皮膚切開で股関節の前方から、筋肉を切離せず、筋間を分ける方法のため、筋肉を傷めずに人工関節置換術が可能で、術後疼痛が軽い、早期リハビリ、早期社会復帰が可能で、通常の場合、ほとんどは3週以内に退院可能です。また、従来の人工股関節置換術では必要であった日常生活動作の制限もほとんどありません。このように患者様にとって、メリットの大きな方法です。

Copyright © Since 2001 Kinan Hospital. All Rights Reserved.