紀南病院では年間1,000件以上の白内障手術を行っていますが、これまで基本的に入院で白内障手術を行ってきました。
その理由は
@都市部と比較し高齢の患者が多く、短時間の手術とはいえ体調の変化に注意する必要があるため。
A高血圧や糖尿病などの持病を持った患者が多く、手術中のみならず手術後に血圧や血糖が異常に変化し大きな問題につながるケースもありそれに対応するため。
B白内障手術でも2,000人に1人が眼内に細菌などが混入し最悪の場合は失明に至る眼内炎という合併症を起こすとされてり、原因のほとんどが手術中・手術直後に細菌が混入するものであり、その期間を外気にあたらず清潔な病院内で過ごし抗生剤の点眼を確実に行なうことが重要であると考えるため。
といった事が挙げられます。
ただ大阪などの大都市を中心に、比較的若く高血圧・糖尿病などの持病がない患者に限りとの基準のもと日帰り白内障手術が行なわれることが多くなってきました。
紀南病院でも日帰り白内障手術をとの要望が多く寄せられてきたため、実施の方向で検討を進めておりました。しかし前述の理由で、日帰り白内障手術の基準を満たす患者は少なく、かつ安全面においては入院手術と同様の条件で行わなければならないことは言うまでもありません。
ついては今回、これまで実績のある入院白内障部門と、新たな日帰り白内障手術部門とを統括し管理する白内障手術センターを立ち上げました。入院白内障手術もセンターで一括し病棟管理を行うことにより、入院期間のバリエーションが増え最短で両眼で3泊4日、片眼で1泊2日で手術を行うことが可能です。
日帰り白内障手術に関して最も懸念される全身管理に関しては、持病の悪化など問題が生じた場合には可能な限り速やかに院内の内科・外科を含めた、全身状態に対応可能な科の医師が対応することを確認しております。
当院の眼科的な管理に関しては、日帰り白内障手術の実績があり、紀南病院・眼科医局の所属する大阪大学付属病院・眼科と同内容とし、かつ昨年度から大阪大学で使用されている最新の白内障手術装置と同じ機種を当院でも導入し手術を行っています。
今後は使用する薬剤など細かい点も徐々に移行し、大阪大学で行われているものと完全に同じ手術・術後管理が紀南地方で受けられるようにしていく予定です。
また、帰宅後の術後状態の急変などに対しては、365日24時間の当直体制をとりセンターに電話連絡すれば休日・夜間でも眼科医の診察を受けられます。
“安全かつ安心に”が白内障手術に関する当院の合言葉ですが、目に関してのみではなく、目は体の一部ですので、より進んで持病を含め体すべてに、更には患者様のことを心配される御家族様にまで“安全かつ安心に”を実現したいとの考えから、眼科内だけでなく医師・看護師・事務員などすべての職員に協力を仰ぎ白内障センターの立ち上げとなりました。
時点ですべての面で最も安全に手術が受けられる施設になったものと考えておりますが、当センターはこれで完全に形が定まったわけではありません。
|